大判例

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仙台地方裁判所 昭和41年(ワ)883号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一、昭和四一年八月二九日午後五時頃亘理郡亘理町逢隈中泉字町裏三七番地先国道六号線路上において、原動機付自転車に乗つた加川敏衛と被告会社保有にかかる被告大久保邦夫運転の普通貨物自動車が接触し、同日午後八時頃その際の傷害により敏衛が死亡するに至つたことは当事者間に争いがない。

二、そこで先づ右事故発生の模様につきつぶさにこれを検討してみるに、<証拠>を総合すると事故当日被告大久保はガソリン等のドラム缶三本を配達しての帰途右現場に差しかかつたのであるか、右国道は巾員六、七米の舗装された道路でその両側には人家が立ち並び一直線の極めて見透しのよい場所である。そして前記町裏三七番地佐藤善治方は国道に面して巾約三米の通路が設けられ、同人方及びその屋敷内の奥に住む原告加川三男方家人は右通路を経て、国道に出入りしておるもので、右通路の南側には国道に面して約4.9米の間に亘り高さ1.3米乃至1.8米の玉つばきの生垣があり、その西側の畑地一帯には枝の茂つた高さ約三米の果樹が植えられており、北側には国道の西側端に沿つて約4.3米の間に亘り、高さ約1.5米の板塀が設けられ、南方から北方仙台市方面に向つて進行する車輛からは前記生垣及び果樹等に遮られて右佐藤善治方通路に対する見透しは困難で通路の手前約一〇米に至つて漸く通路口の存在が認められ、更に近接しなければその奥の部分は確認されない状況にある。被告大久保は右国道のセンターラインに沿つてその西側を南方から北方に向い制限速度である時速約四〇粁で進行し、佐藤善治方通路の手前約三〇米の地点に差しかかつたところ、原動機付自転車に乗つた訴外富田義雄が右通路口で一旦停止することなく時速約二〇粁位の速度で通路を突然国道上に飛出してきたのを目撃し、約一〇米前進した地点で驚ろいて急制動の措置をとつたが両者の間にはまだ距離的に余裕があつたので、富田義雄は被告大久保の自動車の前方を横断し南方に方向を転じて事なきをえた。そこで被告大久保はほつとして制動をゆるめたが、その途端富田義雄に続いて国道を南方に向うべく原動機付自転車に乗つた加川敏衛が富田義雄の場合と同様通路口で一旦停止することなく時速約二〇粁の速度で右通路を国道上に飛出してきたため、通路の手前約8.65米の地点まで進行していた被告大久保は急制動の措置をとると共に衝突を避けるべく急速ハンドルを右に切つたが及ばず通路から国道上に真直ぐに約4.5米飛出した加川敏衛の原動機付自転車に側面から衝突し、国道東側の人家に接触して停止するまで自転車諸共加川敏衛を貨物自動車の前部で約六米引きずり本件死亡事故を惹起するに至つたものであることが認められ、<証拠判断>他に右認定を覆すに足る証拠はない。

してみると本件事故は原動機付自転車に乗つた加川敏衛が前記通路口で一旦停止して国道上の車輛の通行状況と安全を確認したうえで、国道を横断すべきであつたにも拘らずその措置に出ず、通路の奥から時速約二〇粁の速度で漫然国道上に飛出したため国道上を制限速度以内の速度で右通路口の手前約8.65米の地点まで進行していた被告大久保運転の貨物自動車がこれを避ける余裕もなく激突して発生したものであることが明らかである。

思うに人家の立ち並ぶ右国道上を進行する自動車運転者として、国道両側の人車の動静に注意を払わなければならないことはいうまでもないが、右のような通路からの突然の人車の飛出しに対してまでも危険防止のため万全の措置を講ずることができるよう常に注意して徐行すべきであるという一般的義務を負わされているとは考えない。制限速度を規制した趣旨はそのような危険の発生を未然に防止するために一般的に設定された速度制限と解すべきであるから、本件の場合被告大久保が右国道上を時速四〇粁以内で進行していたことにつき、同被告の運転速度上の過失を認めることはできない。又加川敏衛が通路から飛出したとき被告大久保の自動車は右通路口の手前約8.65米の地点まで進行していたのである。このような至近距離に迫つたところで突然に飛出されては同被告にそれでも尚衝突を避けるべき措置を講ずる余地があると認めることは右通路口奥の部分に対する国道よりの前記説示の見透し状況その時の双方の速度と位置関係からして不可能というべきである。即ち本件事故は加川敏衛の一方的過失に起因したものであつて被告大久保にとつては全くの不可抗力による事故であつたと認定するのが相当である。

三、<証拠>を総合すると被告大久保の運転した本件貨物自動車は事故の一年前に被告会社において購入した新車で、事故の一週間前に第一回の車検整備を行ない、事故の前日である昭和四一年八月二八日仙台陸運事務所の整備完了の許可をえたうえ、翌二九日午前中被告大久保が受取つてきたもので、事故当時構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことが明らかで他に右認定を覆すに足る証拠はない。

四、以上の次第であるから被告等に自動車損害賠償保障法所定の責任並びに民法上の責任があることを前提とする原告等の本訴請求はその前提において理由がないので爾余の点に関する判断をするまでもなくこれを失当として排斥し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条第九三条を適用し主文のとおり判決する。(三浦克己)

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